バブルが終焉を迎えつつあった頃,R&Bシーンを席巻したNew Jack Swing。奔放で斬新なヒップホップの魅力と,伝統的なソウル・マナーを融合したゴージャスでグルーヴィーなサウンドに虜となった人は多いだろう。僕もそんな1人。ただ,NJSって厳密に言うと,テディ・ライリーやヘヴィー・Dの一派と彼らのフォロワーに限定されるので意外に狭い。NJSの元祖みたいに言われるキース・スウェットもテディにアイディアを盗まれたという理由から,一線を画すると宣言していたし,アル・B・シュア!も,自らのサウンドを「プログレッシヴR&B」と呼んでいた。
とはいえ,僕らはNJSという一言で,活気あふれる当時のR&Bシーン全般の空気を思い起こす。つまり,80年代終盤から90年代初頭,R&BはNJSに限らず,大きな革新の波が押し寄せ,個性あふれる想像的なサウンド・スタイルが次々と台頭していた。それがNJSというキーワード一言で集約されて認知されていたのが実際だろう。つまり,NJSには広義と狭義の2つの意味があるのだ。
この「New Jack Swing Gold」も,広義のNJSを語る1枚である。アン・ヴォーグやトニーズは明らかにNJSとは一線を画するけれど,あの頃のR&Bシーンには不可欠な存在だったし,ポストNJSとしてヴォーカル・グループを巻き起こすJODECIやBOYZ'UMen,SWVも初期はNJSの影響を垣間見せていた。アル・グリーンまで来るとやりすぎだが。一部の局がリミックス・バージョンで原曲の魅力が伝えきれていないのは残念だが,名曲「Groove Me」はオリジナルだし,感傷的「美メロ」(by松尾潔氏)バラードの秀作であるTroopの「Spread My Wings」が見事なスウィング・ナンバーにアレンジされているあたりは,リミックスの妙でもある。
個人的には,何度も聴いていた名曲よりも,スリリングなメロディーとディープなヴォーカルがグルーヴィーに迫るToday「Why You Get Funky On Me」やBasic Black「She’s Mine」が懐かしく,Father M.C.の熱唱系感傷的バラード「Treat Them Like They Want To Be Treated」が胸に染みた。
あれから20年近くかぁ。歳食ったなぁ。