夏にぴったりの一冊。17歳の有海と19歳の春川のつたない、そして不安定な恋。力の抜けた十代の青年と少女を書かせたら壁井ユカコはピカイチではないでしょうか。目新しい設定はないのに、なぜか惹きこまれてしまう。おそらく作者の描写力のうまさが全てをカバーしているのでしょう。こんな小説があったらいいなと思い描いていた一冊。ある意味このジャンルの小説としては完成しているのでは?
また、ページをめくりラスト近づくにつれ、せつなさが増していくのがこの本の特徴です。イメージは墜落していくペットボトルのロケット。落ちてしまうとわかっているのに、見ていたい、そして、もしかしたら本当のロケットのように飛んでいくかもという希望と期待。
この作品は、まさに墜落するような恋をした青年と少女の青春ストーリーです。ラスト周辺では大方の読み手が「この二人の恋がうまくいきますように」と願わずにはいられなくなるでしょう。壁井ユカコ特有の痛せつなさにやきもきしますが、けして不快なやきもきではありません。とても綺麗な宝石箱をみせてもらった気分です。
ハードカバーで少しお値段も張りますが、装丁も綺麗で買って損はない作品だと思います。(あと読了してから本にちりばめられている挿し絵をみるともう一度せつない気分になります)