新作の発表に先駆けて、この名盤のレビューを...
夜をコンセプトとしているアルバム。
これでいくつの夜を過ごしてきただろうか・・・
根底はロックだが、その中に洗練されたテクノ、そのほかにもクラシック、フォークなどの要素が無理なく詰め込まれており、その上演奏力が抜群に高いから非常に聴きやすい。
一見すればテクノだが、それだけでは到底引き出せない世界観が詰まっている。
その要因はソングライター山口一郎の稀有なポップセンスと独特の歌詞にある。
曲構成はほとんど従来のものに当てはまらない変調詞な物であり、その中に日本語独特の言い回しを多用し、空想的で物語性のある歌詞が乗っかり、他では一切なかったような独特な音楽が出来上がっている。
その作曲面での最高傑作が"ナイトフィッシングイズグッド"
クイーンの"ボヘミアン・ラプソディ"に対するオマージュとも言えるこの曲は一見、バラード、オペラ、ロックという構成でまんまクイーンだが、よくよく聴いてみるとフォーク、歌謡、テクノなどの要素が詰まっており、山口の独特の歌い回しにより全く違う新しい曲として昇華されているのがわかる。
古いものと新しいものが交じり合ったことによってしか生まれ得なかった、サカナでもっとも素晴らしい名曲だ。
そして"ワード"。夜が僕を試しているなというフレーズが非常に印象的で、聞こえてると言葉を繰り返す歌詞も秀逸だ。
アルバムは、テクノ全快の"サンプル"、”雨はきまぐれ”〜インスト"マレーシア32”〜フォーク調の"うねり"の一連の流れ、後半がテクノインストの"ティーンエイジ"、ギターラインが複雑な"郷愁トレイン"、和的なメロディーの"新しい世界"と続く。
最後はアルバムのハイライトと言うべき"アムスフィッシュ"で幕を下ろす。
実はこの終曲がこのアルバムで一番好きだったりする。静かで幻想的な曲調と歌詞はやがて感動的なコーラスへ。
ラ〜ララララ〜・・・。このコーラスは聴くたびに涙が出てくる。ここまで美しく感動的なラストはJ-ROCKでは本当になかったと思う。
この曲で終わっていなければ自分はここまで高く評価はしなかった。
そして最後に息継ぎをし、夜は泳ぎ続けるのだ。
なにも聴くものがない夜、何も考えたくないような夜、そんな時、自分はこのアルバムを聴きたくなる。
夜という不思議な世界の中をまるで魚のように泳ぎまわっているかのような感覚にひたりながら・・・。
これは音楽云々の議論では説明できないほどの奇跡的名盤である。