ヤノマミとは人間という意味である、というのがこのドキュメンタリーの命だろうと思う。現地で取材された方々には敬意を表したい。
アマゾン奥地の先住民であるヤノマミ族の記録であって、殺した新生児をシロアリに食わせるとか狩りの獲物である動物を解体するというような、現代の日本人にとってはあまり馴染みのない映像が含まれてはいるけれど、記録されているのは人間の日常生活です。現代の日本人がごく普通にやっていることと、実は本質的には同じなのではないかと思う。
日本では分業化されていて表面的には見えない状態にはされているけれど、我々は、豚や牛や馬を殺して肉を食べているし、自分たちの子供も殺している。堕胎は、特に11週までの胎児については、ごく手軽な書類を用意するだけで可能なことであって、全国の産科医が日常的にやっている。厚生労働省の人口統計資料で堕胎数を調べると、つい50年ほど前には出生数の7割以上の命が堕胎で中絶されていたし、2006年でも出生比25.3%の命を人工妊娠中絶で消している。受胎した命のおよそ半分を生かし残りを殺すヤノマミ族と現代の日本人とに大きな差はない。人と人でない物の境界が少し違っているだけのことです。歴史的にも、幼い子供の命を奪うこと、すなわち間引きによって自分たちが生き延びるということを、少なくとも江戸時代までは全国でやっていた。
地で生き、天で生き、最後は虫となって消える、というヤノマミ族の思想は我々にとってむしろ馴染み深いもののように感じられる。