この作品を観ながら、明治の偉人達の足跡を噛み締めながら、つくづくと感じる事は、連綿と続く日本人の持つ精神性の素晴らしさであると共に、
“この国に生まれて良かった。日本に生まれて本当に良かった”
という、掛け値の無い素直な感動と誇りです。
思うに明治の人物達には、表面上の豪胆さとは表裏を為して、非常に繊細で柔軟な思考力や発想力を併せ持っていた様に思います。健全な意味でのバランス感覚に優れていたように思います。それは幕末からの動乱をかいくぐり、列強ひしめく国家存亡の中で育まれたものでもあるでしょうし、武士道精神等に裏打ちされた、日本人本来の持つ実直さや勤勉さの顕れでもあるのでしょう。
引くに引けない時には、身を粉にして立ち向かわなければならない潔さと共に、物事を見極め、節度、引き際というものを非常に見事に体得していた様に思います。
生前、原作者の司馬遼太郎先生は、軍国主義の賛美と取られかねない事を危惧して、この作品の映像化について、頑なに固辞し続けていたと言います。先生の死後、10年以上の時を得て映像化がなったこの作品を観て、天国の先生は何と仰るのでしょうか?
“やっと、この国の皆さんも表面上の戦闘行為等だけでは無く、この作品の底流に流れる、この民族の精神性について正しく理解してくれるだけの円熟と度量とを併せ持ってくれた”と喜んでくれているでしょうか?
映像は“素晴らしい”の一言に尽きます。渡辺健さんをナレーションのみに使用するという贅沢さに加え、豪華な出演者達の本気度もヒシヒシと伝わって来ます。伊藤博文を演じる加藤剛さんを始めとして、皆さん渾身の演技です。
久石譲さんの音楽と言い、ロケーションの素晴らしさと言い、テレビドラマの枠を越えた、正に劇場作品を凌駕する壮大さです。
広瀬武夫少佐とロシア令嬢アリアズナとの美しく、そして悲しい運命の恋。明治の文人・正岡子規の志半ばでの死。激動の時代のうねりに飲み込まれながら、必死に自らの運命・国家の運命を切り開こうとした偉大な先人達の物語です。
心して御覧有れ。そして、経済的には未だ未だ貧しくても、“坂の上の雲”を信じて追い続けた明治の人々の、その健全たる魂を思い、映像の隅々から溢れ出る明治の薫りに酔いしれようでは有りませんか。