このDVDは、1979年1月5日に放映されたNHKスペシャルをDVD化したものです。個人的には最高レベルの衝撃を受けた映像でした。
「千日回峰」は、文字通り死ぬ覚悟でやるような極限の修行です。途中での失敗は死を意味しているので、失敗時に自害するための短刀を常に携帯して歩いています。服装も白装束です。
千日回峰の行は、毎日3‐4時間の睡眠だけで7年間にもわたります。
比叡山の山の中を毎日午前2時に出発し、真言を唱えながら260箇所で礼拝しながら歩き続けます。けもの道のような山道を毎日30キロ6時間で歩き続け、それを4年間も続けます。
その後、「堂入り」というものがありますが、この映像が衝撃的でした。
9日間の断食と不眠を続けます。水分すらとれないし横にもなれません。
不動明王の前に座り真言を唱え続け、毎朝午前2時には堂を出て不動明王に水を運び供えます。
命がけの行なので「堂入り」前に「生き葬式」すら行われます。
堂入り(不眠と断食)の9日目。最終日の表情は衝撃です。生きながら死んでいるような状態で、初めてこんな極限状態にいる人間の表情を見ました。体から死臭すらするとのこと。
人間は精神と祈りの力だけでここまで生命力を保てるのか、と。衝撃と共に感動を感じました。
この生死を賭けた堂入りの後、行はまだあと3年も続きます。
これまでは自分のための「自利行(じりぎょう)」で、この「堂入り」を経て自分以外のための「化他行(けたぎょう)」へと移行します。こういう修行を経験した人こそが、やっと他人のために生きる修行ができるとのこと。
『修業は初め、己のためにであり、それを乗り越えた暁に、他者のための行が始まる。』
酒井大阿闍梨の言葉は、重いです。
7年に渡る「千日回峰」で歩く距離は約4万キロ。これは地球1周分にも相当します。
この「千日回峰」を成し遂げたのは延暦寺の記録では47人しかいないとのこと。
さらにすごいのは、この酒井大阿闍梨は、なんと1回目がおわった半年後には2回目に入り、それも完遂しています。
千日回峰を2回も成し遂げたのはたった3人しかいないらしく、その3人の中の1人。
人間のすごさを感じます。生命それ自体や、それを支える精神や信仰というものすらも映像から感じます。
この映像を見てから、寝不足で辛い時も、酒井雄哉大阿闍梨を思い出して自分を奮い立たせるようになりました。
ほんものの人間と言うのは、こんなにも強く、優しく、それでいて謙虚なのだと、映像を通して感じます。類のない稀有な映像です。
こういう素晴らしい映像を撮影し保存しているNHKの方には深く感謝します。