米国人と日本人の、現在日本に住む2人の大学教授による本。ロックの元となった音楽についてバランスが取れた解説となっており、日本語で書かれた参考資料の1つとして持っていてもいいと思う。しかも安価である。但し、後述するように、「書かれなかった部分」に重大な問題があるので、注意が必要である。
(長所)
・地図があり、視覚的に理解しやすい。
・「パーチマン刑務所農場」、「黒人教会」、「バプティスト派の浸礼」などの写真があり、参考になる。
・ブルーズ、ジャズ、ゴスペル、カントリーをバランス良く取り上げている。
・「有色クレオール」、「奴隷蜂起」、「野外礼拝」、「先導歌唱」、「地下鉄道」など、米国黒人の歴史と文化を理解するためのキーワードが適切に織り込まれている(但し、「有色クレオール」については著者が意識的に隠したと思われる部分があるので、他の文献の参照が必要)。南部の白人文化についてもカントリーの部分で述べられている。
(短所)
・ミズーリ州セントルイス出身(ご丁寧に本書のP.8に地図があって、南部文化圏としている!)のチャック・ベリーに関する記述が全く無く、「ロックを生んだアメリカ南部」というタイトルの本として、非常に奇異である(リトル・リチャードはある(P.12)。エルヴィスが黒人の音楽を閉じ込める扉を開いた、との都合の良い発言が引用されている)。本書の執筆者のうち一人は米国人であるが、作曲ができないエルヴィスの存在意義を脅かす、黒人の真の天才作詞・作曲家チャック・ベリーは危険な存在なのであろう。私は、ロック史の改竄に近い作為を感じた。
・ロバート・ジョンソンの生年は1911年が有力であり、1898年ではない(P.71)。