1942(昭和18)年5月29日、山崎保代大佐の指揮するアッツ島守備隊は、アメリカ軍との激しい戦闘の末に全滅した。これを大本営は「玉砕」として発表する。そもそも『広辞苑』によれば「玉砕」とは「玉が美しく砕けるように、名誉や忠義を重んじて、いさぎよく死ぬこと」と記されている。太平洋の島々で散っていった多くの将兵の「死」は本当にそんなに美しいものだったのだろうか。
本作は、2010(平成22)年8月12日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「玉砕〜隠された真実〜」をDVD化したものであり、まさに「玉砕」の先駆けとされたアッツ島2600名の将兵たちの死の真相に迫ったものである。一体、その死はどのように引き起こされ、利用されていったのであろうか。これまであまり明らかにされてこなかった大本営の本音が垣間見えてくる。
すでに阿川弘之が『
高松宮と海軍 』で「アッツ玉砕を大本営が発表すると、『アッツ魂』『アッツ精神』『アッツに続け』といふ言葉が、連日新聞の紙面を賑はすやうになつた。軍官民みな大変な感動ぶりだけれど、『アッツ魂』を身に体して一億『アッツに続』いたら、日本民族は滅亡する道理である」と書いているが、まさにその通りである。
アッツ島守備隊の「玉砕」を機に『戦陣訓』の「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」という教えを国民に浸透させ、まさに一億国民を「アッツに続」かせようとした大本営の責任は重大であろう。死ぬことが目的となった戦い方などあってはならない。本当に「玉砕」も「特攻」も狂気が支配した時代の結果であったことを痛感させられた。