観ていて辛くなるが、日本人の本質を表している。
海軍の中枢、頭脳であった軍令部参謀たちの言葉からは「アジア解放」「自存自衛」と言うような大儀はない。
生々しい本音。
海軍のためにもっと予算がほしい。 予算を取るために対米戦争をちらつかせる。 でも誰も本当に戦争ができるとは思っていない。 アメリカと戦えば負けるとわかっていた。 わかってはいたが体面があるので言えない。 陸軍に舐められるのも嫌だ。 予算をもらった後はもう後には引けない。 今更アメリカとは戦えませんと言えない。 戦争を始めた後も平時編成のままで作戦指導を続ける。 長期的作戦計画などもない。 すべて場当たり的。 特攻作戦にしても外道とわかっていても、やってはいけない作戦だと思っていても誰も口に出せない空気。
日本の縮図のような話だ。 日本はまさに空気を読む社会。 空気を読んで行動しないと非難される社会。
皆が皆周りに気を遣い、空気を読んで、はみ出さないように息をひそめて生きる社会。
先行発売された本を読んだのちにこの作品を鑑賞した。
日本海軍400時間の証言―軍令部・参謀たちが語った敗戦では取材の過程を含めて映像では割愛された多くの情報が含まれるのでどちらかというと本が主体でNHKスペシャルの方が映像をもってこの本を補完しているような印象を持った。
力作であるが演出過多だと思う。 特に音楽。 この作品のために作曲されたものだが似た傾向のメロディはNHKのこの種のドキュメンタリー番組でよく使われる。
日本人の心に何かを訴えかけようとするような、とにかく感傷的になる音楽なのだ。
日本海軍の頭脳であった高級参謀が語る重い現実、これを感傷的に受け止めてはならないと思う。
作品で語られる特攻隊員たちについても同じだ。 当時彼らがどういう気持ちで死と向き合っていたのか。 私にも二十歳の息子がいる。 どうしても重なる。 特攻隊員たちの話を、遺された言葉を涙なしに聞くことなどできない。
しかし、これを単に感傷で受け止めては絶対にいけないのだと思う。
もっとドキュメンタリーとして淡々と事実を伝えてほしかった。 この音楽、意図的な映像、まるで感情操作だ。
戦争時の行動過ちを描き出し、現在にも通じないか、あれは本当に遠い昔のことなのかと問いかける。
実は20年ほど前に当のNHKが「NHKスペシャル ドキュメント太平洋戦争」でやったことだ。
扱う内容こそ違うが、NHKの社員は自分たちの大先輩が過去どんな作品を作ってきたのか観ていないのだろうか?
作品の締めで結論めいたもの、教訓めいたものを語るのだが、これが少々鼻についた。
「私たちは間違いを犯しました。 もう二度とこんな間違いはしないようにしないといけません。 もう二度と戦争はしません、おわり。」
もちろんこんな言い方はしていないが、似たようなものだ。 小学生の作文みたい。
こんなことではいけないと思う。
70年前の重い現実、そして現在の私たち。 彼らは我々の父であり祖父であり曾祖父なのだ。 同じ血が流れている。 同じ歴史を共有している。 同じ日本人なのだ。
我々は同じことを繰り返す。 いや、正確に同じことを繰り返すというのではないが、同じような行動をしている。 空気を読む。 流れに乗る。 そういう気質を持っているということをしっかり認識すること。 あれは遠い昔の、別世界の話ではない。 ここにこそこの作品の意義があるのではないかと思う。
福島第一原発の事故を見れば一目瞭然。 東電の、原子力保安安全院の、そして政府の対応、行動を見れば確かに私たちは70年前から変わってはいないとわかる。
彼らは私たち、私たちは彼らなのだ。
特典として「日米開戦を語る」という座談会の映像が(70分以上もある)含まれている。 こちらもかなり興味深かった。
あの戦争を止められず日本を破滅に邁進させた力の中に世論、それを煽ったマスメディアがあるということにほんの少しだが触れている。