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モンゴル帝国というと、残虐な侵略者というイメージが世界的に強い。だが本書では、実は、モンゴル軍が無敵の強さを誇る一方で、なるべく流血をさけていたと指摘。残虐なイメージが広がったのは19世紀以降で、ヨーロッパから流布されたという。
フビライ・ハン(本書では「クビライ」と表記)は、商業をやりたい人間に資本を貸し付け、その利益の7割を国家に納めさせるという商業振興策をとった。軍事的に帰服させるよりも、商業ができるということを重視したというのである。
また「陸の大帝国」というイメージが強いが、とくにクビライ以降は、むしろ「海の道」を使った交易を重視した政策を推し進めたことも力説されている。
その証拠の一つは、ヨーロッパが「アフリカは大陸である」と発見するよりも100年以上前に、実はモンゴルの「世界地図」では、すでにアフリカ大陸の全体が記されていたという事実である。インド洋はもちろん、大西洋が書かれているのである。
また、景徳鎮に代表される中国の陶磁器についても、その最高潮は実は元の時代に訪れたこと。その磁器は世界中の遺跡や博物館にあること。日本に大軍が押し寄せた文永の役、弘安の役は、クビライが積極的に推し進めたものではなく、クビライは、ただ許可を与えた程度で、帝国の体勢にはほとんど影響を与えない戦争だったこと。そのほか「なるほど」と思わされることが満載している。
モンゴルや中国、シルクロード、中央アジア等の歴史が好きな人には、ビデオを見るよりも、いいかもしれない。というのも、写真もわりと多く取り入れられているし、テレビでは説明されていなかった詳細な部分が活字に残っているからである。
歴史学者の杉山正明氏が書いたメインの概説に加えて、ところどころNHKの記者が書いた「取材の印象記」や、気鋭の研究者が書いた最新の研究成果、さらに巻末にはモンゴルに関わる土地(たとえば鎌倉、博多、寧波、杭州、デリー、ダマスカス、イスタンブールなど)の歴史について、モンゴルの時代のことを中心に簡潔に書かれている。
歴史に興味がある人には、読んで損はないと思う。
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