1945(昭和20)年8月8日、ソ連が日ソ中立条約を一方的に破棄して日本に宣戦布告し、満州へと侵攻を開始した。かつて「泣く子も黙る」と恐れられた関東軍も、戦局の悪化に伴う南方への抽出により、その戦力は形骸化。ソ連軍の前に関東軍はあえなく壊滅し、満蒙開拓移民をはじめ、多くの日本人が悲劇的な最期を遂げたのであった。
本作は、2010(平成22)年8月8日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「引き裂かれた歳月〜証言記録 シベリア抑留〜」をDVD化したものであり、終戦後に57万人以上もの日本人が強制労働を強いられたシベリア抑留の実態を追ったものである。そこには満州国崩壊の時以上に人間として辛く悲しい現実が横たわっていたのであった。
雪と氷に閉ざされたシベリアでの過酷な重労働。そして「民主化」の名の下に行われた思想教育とそれに伴う日本人同士の醜い争い。それを乗り越えて帰国を果たした抑留者への偏見と差別。そこには一人の人間としての「戦争」があったのである。またシベリアの大地に眠る5万5千人以上の声なき声があることも決して忘れてはいけないだろう。
私は山崎豊子の小説『
不毛地帯』を読み、シベリア抑留の現実を多少なりとも理解しているつもりであったが、やはり経験者の言葉の重みは違う。高齢になった元シベリア抑留者たちの涙ながらの証言を是非とも目の当たりにしてもらいたい。そこには我々の知らない「戦争」の現実がある。元二等兵の藤木伸三さんの「悪い夢でもみていたような時期でしたね」という言葉が今も私の耳から離れない。