1945(昭和20)年8月6日の広島、8月9日の長崎に人類史上初の原子爆弾が投下された。その犠牲者は20万人あまり。日本では原爆投下2日後から大本営の下で陸軍省医務局が現地での調査を開始した。戦後、その報告書はアメリカに渡され、アメリカ国立公文書館の中で眠っていたのである。
本作は、2010(平成22)年8月6日にNHK総合で放送されたNHKスペシャル「封印された原爆報告書」をDVD化したものであり、アメリカ国立公文書館の中で眠っていた181冊、1万ページに及ぶ原爆被害の報告書からその調査の真相に迫った秀作である。
当時、広島の部隊にいて被爆した沖田博さんは、様々な検査を受けて「お前、モルモットじゃ!と言われたような気になりました」と語っている。こうした検査結果も被爆者のために使われたのであれば少しは理解できるが、そのデータは全てアメリカへと渡されていた。
その理由を元陸軍軍医少佐の三木輝雄さんは「いずれ要求があるだろうと。その時はどうせ持っていかなくてはならなくなる。早く持っていった方が、いわゆる心証がいいだろうということで要求がないうちに持っていった」と語っている。そして心証をよくしようとした背景には「731のこともあるでしょうね」とのことであった。
犠牲者は、いつも名もなき人々である。この報告書も被爆者のためではなく、日本がアメリカと交渉するための「カード」として使われた。そもそも原爆の投下は、まさにアメリカによる「人体実験」ではなかったのか。結果的には日本も、それに荷担したのではないか。原爆投下のさらなる闇が垣間見えてくるようである。