内容説明
2000年に「POLE TO POLE 2000」に参加し
北極点から南極点への人力踏破をとげ、
2001年には世界七大陸最高峰登頂を当時世界最年少で達成した石川直樹が、
世界に点在する先史時代の洞窟壁画を撮影したシリーズ。
日本、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリア、インド、ハワイ……
世界各地の10カ所の壁画との遭遇を、
その旅のプロセスから捉えたシークエンシャルな構成。
アルゼンチン南部のパタゴニアの洞窟に無数の「ネガティブ・ハンド」の叫びがこだまする。
レビュー
「風がすっぽり体をつつむ時、それは古い物語が吹いてきたのだと思えばいい。
風こそは信じがたいほどやわらかい、真の化石なのだ」
見えない世界に価値をおくこと、
石川直樹の太古の壁画をテーマにした写真集『NEW DIMENSION』を紐解くと、
ふと谷川雁の詩の一節が浮かんできた。
石川は、たとえば南米はパタゴニア、オーストラリアはノーザンテリトリー、ノルウェーはアルタといった
世界中のサンクチュアリに、さまざまな旅の途上にて折に触れ足を運び、洞窟壁画を撮影していった。
壁画は約2万年前のものもあれば、数百年前のものもある。
壁画は願いでもあり、叫びのような刻印でもある。
この人類の軌跡を、石川はなめるように近づき触れていく。
原初の知覚に触れるという撮影の衝動、それは素直な喜びに溢れ、
様々な世界の不思議を辿っていく。
星の光跡、潮の流れ、風の匂い、夜の闇、
今、人は自然を読み取る力の何を失っていったのか、
それでも石川は過去ではなくその先の未来へと一歩足を踏み出すことを願う。
先へ進む勇気と等価の自然の内包する力を失ったことの悔い、
それこそ彼の旅を駆る原動力なのかもしれない。
ふと呪術的な壁画がときどき子どものいたずら画のように見えてくる。
それこそ見る者の『NEW DIMENSION』(新しい次元)なのか、
それとも芸術とは崇めない、フットワークよろしく石川の旅の軽さなのかもしれない。
新井 敏記(編集者) --「朝日新聞」、2007/11/4
岩に押しつけられた無数の手の跡。
写真は南米・パタゴニアにある洞窟の「ネガティブ・ハンド」と呼ばれる壁画だ。
手に顔料を吹き付けて作った鮮やかな像は、
太古の人間の姿をよみがえらせ、
幽霊を見たような衝撃を受ける。
人は壁画に何を託したのか。
日本、ノルウェー、フランス、アルジェリアなど
世界の壁画を写した本書は、
時空を超え表現することの根源的な意味を問いかける。 --「日本経済新聞」、2007/10/14