当時を振り返ると、世界情勢に大きな変革があり、ミュージシャン達がこぞってメッセージ色の強い楽曲をリリースしていた。氷室においてもバラエティに富んだ前作「FLOWERS for ALGERNON」から一変、直接的なメッセージ・ソングこそないが、「スパイ」「差別」「改革」と言った重いテーマの曲が並ぶ。今も他のアルバムの曲との融合性に乏しい点から、これら楽曲を「組曲NEO FASCIO」とでも表現できるのではないか?
アルバム「NEO FASCIO」のレコーディングは、ドラムスそうる透以外はプロデューサーでもある佐久間正英が全パートを担当し、音に重厚さを持たせている。逆にライブではマニュピレーターをあまり駆使せずバンド4人で音を出している為、多少物足りなさが感じられる。
しかし、アルバム・コンセプトに合わせた本ツアーは、まるでロック・オペラにも似た雰囲気がある。勝利の旗のもと、重厚な衣裳で歌う氷室は、さながらヴェルディの歌劇「オテロ」のようだ。その意味でも本作を見る価値は十分ある。
本作の収録日とは異なるが、私が足を運んだ89年12月の横浜アリーナでは、前方のオーディエンス達がエキサイトのあまりステージ付近に駆け寄ったり、氷室自身がMCで産まれたばかりの息子さんの名前を紹介するなど、印象深いシーンもあった。