本書はビジネス書を超えたビジネス書である。
組織が成功するための秘訣を述べた本である、といえば、普通のビジネス書じゃないか、という人もいるだろう。でも、それは、ちょっと違う。
個人にしても、組織にしても、成功する要因は何だろうか。あるいは努力、あるいは運、あるいは努力と運の両方。人によって答えは異なるだろう。本書の著者は、努力と運の両方だと考えてはいるが、努力が運を引き寄せるのだという。いいかえると、運を最大に生かす方法という方法があるのだ、という主張である。
その実例を、米国のNASA(米国航空宇宙局)で、成功を収めたあるプロジェクトに求めている。そして、このプロジェクトにおける雇用方法、権限委譲の方法、組織の運営方法、コミュニケーションの取り方、報酬の与え方などについて、きわめて具体的に論じている。
たとえば、無駄のない運営といっても、「社員に対する福利厚生費を減らして営業経費を減らすなどということを薦めているのではない。そんなことをすれば、良い人材の雇用も維持も危険にさらしてしまう」とある。安易にリストラに走りたがる経営者に聞かせたいような論である。
ここまでなら、普通のビジネス書にだって書いてある。私が感心したのはその先である。
組織にとって最も大事なことは「運を最大に生かす文化を創る」ことだという指摘である。文化が必要だと普通のビジネス書はいわない。ここにいたっていわゆる「ビジネス書」を超えた、と私は思う。「一流の企業が成功するわけは、何といっても、ものをよく考えるからである」というくだりは、思考停止傾向が強い今日の日本社会に示唆的ではあるまいか。経営者や社員だけではなく、政治家も学者も、老人も若者も、男性も女性も、眼光紙背に徹して読むべき指摘ではなかろうか。「ビジネス書を超えた」という所以である。