アメリカと日本における宇宙開発の歴史を題材に、巨大プロジェクトにおけるシステム工学受容の歴史を論ずるだけでなく、その歴史の分析を通して一般社会においてもあまねく存在する「個人の尊重」「組織の統率」といった社会学的問題をも提起しています。技術のディテールにも踏み込んだ幅広い分野の参考文献に象徴される著者の豊富な読書量と関係者への精力的なインタビューとが培った深い洞察力がこれらの問題を明快に論じていて、300ページを超える分量も全く飽きさせません。システム工学が「IT化」という形態で我々の社会生活の隅々にまで浸透しつつある現代において、本書の提起した問題は今改めて問い直されるべきと考えます。科学技術史の専門家だけでなく、技術開発やシステム構築などのプロジェクトにおけるリーダー・マネージャーといった方々、さらには小生のような市井の科学技術愛好家にも一読をお薦めします。