《グレート》は、ワタシ的にはヴァントのベストに推したいくらいの名演だと思う。私は名演と言われるベルリンフィルとの《グレート》はスケールの大きさと完璧な構築を併せ持つ素晴らしい演奏だと思うが、それゆえにシューベルトの最大の美質である歌謡性が阻害されていて共感できなかった…簡単に言えばシューベルトの曲は、どの曲も鼻歌でメロディーを口ずさめる様な演奏が良いのです。
このディスクでのN響の《グレート》の素晴らしさは正に歌謡性であり、これがシューベルト交響曲の正統派だと思う。余り大きく構え過ぎない…しかし決めどころでは胸のすくような爆発を見せるN響の熱演には感激してしまう。
《ブルックナー8番》も、ワタシ的には今の所(NDRの旧盤を聴いてません…聴かねば!)この演奏がベストです。
この演奏は虚飾を排したストイックな演奏でありながらN響の弦のしなやかさ、木管の柔らかさ、鳴らし過ぎない金管の温かみある響きによって「冷たい素っ気ない演奏」から救われている。第二楽章までは熱気が溢れ出すような演奏だが、第三楽章からのアンサンブルの透徹、ぎりぎりと絞り上げるような厳しい表現には息を呑む…物凄い緊張感なんです。しかもテンポが遅く長い…これは聴く「禅」だ。
NDR新盤は余りに厳しい演奏で耐え難い部分があり(私のリスナーとしての修業不足(笑))、ミュンヘン盤は柔らかみが弛緩に聞こえ…第四楽章で退屈して眠くなった。このディスクを聴くとベルリン盤は、ただ金管が煩い、コントロールされていない荒い演奏にしか聞こえない。
この《ブルックナー8番》はヴァントの厳しさを、N響が日本的なたおやかさで受け止めた名演ではないだろうか。ラスト5分で、ヴァントからGO!サインが出たら間髪入れずに爆発して、バシッと決める勤勉さも日本人オーケストラらしい。エンディングはどの盤より格好良いです!