母体であるanNinaとしての活動もアニメ系テーマ曲などで顕著なAnnabel。
あくまで囁きを基調としたピアノバックの楽曲世界を紡ぐ姿勢が美しい。
その呼吸が行き着く先には、常に静かな水面が広がる。一滴ずつ
落ちていく雫が広げる波紋。その囁きの歌声が響かせる波紋は、
静かな鼓動で想いを確かに胸に広げていく。
畑亜貴の紡ぐ歌詞が歌うのは、静寂の確信。天国と地獄、生と死...
そしておそらくその向こうにある悦楽。罪と罰、その両者に阻まれた意識。
記憶が遠くに飛ぶ。落下と上昇。それらを繰り返しながら、地上の誰かを思う。
誰かに思われる。その瞳の輝きだけが鮮やかで。多分、それを“絆”と呼べるならー。
浮遊する感覚の中で、ただ歌声だけが確かに意識に響きわたる。
曖昧模糊とした世界で、それだけが真実。そう信じられる鼓膜の快楽。
それは意味を持った言葉ではなく、あるいは行間で感じる詞(ことば)の迷宮。
抽象的な幻惑の腕(かいな)に抱かれ、迷い込んだのは、彼女の映し身...
c/w「filum」はAnnabel自身の作詞で、こちらは同じバラードでも、
割とありふれた穏やかな風景。それでも生楽器の演奏も贅沢にAnnabel
独自の美的感覚にあふれたナチュラルでアコースティックな楽曲展開が魅力的。
多くは語らない。しかし、確実に音楽の幅を広げる可能性を秘めたアーティスト。
逆にアニメーション発であるということの方が些かの驚きでもある。