一般の吉沢秋絵ファンにとっては、なかなか耳にする機会のない、しかもマイナー好みのファンなら絶対に期待してよい「あなたより素敵な人」と「マロニエ通り」が聴けるのがこの再発盤のポイントだろう。
「スケバン刑事」の吉沢秋絵、「なぜ?の嵐」の吉沢秋絵は知っているが、それしか知らないという人は、収録された後期シングルによって、吉沢秋絵の予想外の歌唱と、楽曲の質の高さに驚くと思う。
跳んで弾んでときどきパンチラというアイドルファンには向かないが、しっとりしたマイナー調の曲を好む人なら絶対に損はしない。その意味では「彼女の夏+全シングル」ではなく、「3rdアルバム+全シングル」が適当だったのだが。
というのも『彼女の夏』は初期のヒット曲を収録しているので一般向けと思われがちだが、このアルバムの魅力はヘタを承知でひたすら一所懸命に歌う17歳の吉沢秋絵の真摯な歌唱にある。その意味ではむしろコアなファン向けといっていいからだ。
吉沢秋絵の真価は歌唱が格段に進歩し、提供される曲も非常に密度の高いものになる後期にあるが、当時人気は急激に落ち込んで、ほとんど正当に評価されていない。
後期シングルを収めたこの再発盤によって、吉沢秋絵が「なぜ?の嵐」だけでないことを知ってもらえるのはファンとしてたいへん嬉しい。反響によっては他の二枚の再発もありうる。
その一方で、コンプリートの可能性はほとんどなくなったといっていいだろう。複雑な心境である。