このCDについて
●インディ時代の89年から、バンドのラスト・ツアーとなったイン・ユーテロ・ツアーの94年までのステージから選曲されたライヴ・ベスト・アルバム。バンドの生の軌跡を辿れる1枚。
●『MTV アンプラグド・イン・ニューヨーク』とは対照的に、バンドの荒々しい魅力が120%記録されたエレクトリック・ライヴ・アルバム。
●1996年作品
【アーティストについて】
ニルヴァーナ NIRVANA
メンバー:カート・コバーン(ヴォーカル/ギター) デイヴ・グロウル(ドラム) クリス・ノヴォゼリック(ベース)
ロック・シーンにおいては未だ周辺地域でしかなかった米西海岸ワシントン州シアトルのインディ・レーベル、サブ・ポップから89年にシングル「ラヴ・バズ」でデビュー(当時のドラマーはチャド・チャニング)。同年、デビュー・アルバム『ブリーチ』発表。91年にメジャー・レーベル、デヴィッド・ゲフィン・カンパニーからセカンド・アルバム『ネヴァーマインド』を発表。初回出荷数25,000枚足らず、しかもプロモーションのためのツアーもなし、という悲惨なスタートだったが、シングル「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」がラジオとMTVで爆発的にオン・エアされると同アルバムは全米で300万枚以上のセールス、チャートの1位を獲得。これを境に瞬く間に彼らのフォロワーが続々とシーンに登場し、世界中に<グランジ>の毒が撒き散らされることになった。92年に編集アルバム『インセスティサイド』、93年にサード・アルバム『イン・ユーテロ』を発表し、人気を浮動のものとしたが、この頃からカートはドラッグに深くおぼれ始め、興奮剤の過剰摂取による入院騒ぎ、自殺未遂騒ぎなどを引き起こす。そして1994年4月、自宅のバスルームで頭をライフルで打ちぬいたカートの無残な遺体が発見された。この衝撃の死によって、バンドは解散を余儀なくされた。
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カート・コバーンと共にニルヴァーナを組んでいたクリス・ノヴォセリックとデイブ・グロールが、コバーンの死後2作目となる本作の編集を計画したのは自然なことだった。というのも、コバーンの死後にリリースされた最初のアルバム
『MTV Unplugged in New York』の重苦しさと緊張感が、彼の自殺後数日間MTV局で特別番組として繰り返し放送されたために、このバンドのライヴとして強く印象づけられてしまったからだ。けれども、ニルヴァーナのライヴの本質は、そうしたアコースティック感でも死への願望でもなく、あらんかぎりの精力を注いで表現される生への切望感だった。
本作はバンドの全ライヴ音源から広く16曲が収録され、どのナンバーも信じられないほど騒々しく狂暴で、ときには考えられないほどグシャグシャである。コンサート開始前の音の断片であるオープニング曲「Intro」でコバーンは歓喜の叫びを上げているが、これは「Where Did You Sleep Last Night」の苦悶の叫びとは対照的と言える。続いてバンドは「School」を開始し、このナンバーは最後に「悲しむな」と鼓舞するかのようなコーラスで終わるが、その感傷も長続きはせず、「Smells Like Teen Spirit」、「Sliver」、「Heart-Shaped Box」、「Negative Creep」といった躍動感あふれる轟音ナンバーにかき消される。
確かに本作は喝采に値するものの、未発表の貴重なナンバーが収録されているわけでもなく、今は亡きニルヴァーナのアルバムの中で傑出した作品とは言えない。つまり本作は過去のスタジオアルバムほどの重要性はなく、悲観的だが啓示的な『Unplugged』と比べてさえも同様である。(Jim Derogatis, Amazon.com)