1997年の映画版前作は、英国人の思う米国、セットだらけの撮影、ハリウッドまがいの脚本、と、まさに英国映画のダメなところ集めたようなものだった。だが、それで失望して、その十年後にあえて作られた、この第二作を見逃すと、とても後悔するだろう。それくらい、この第二作は良い出来だ。
もともと、Mr.ビーンというキャラクターは、戦後のフランス映画で世界的に大人気だったパントマイム・コメディアン、ジャック・タチのムッシュー・ユロを原型としている。そして、今回、このビーンの映画は、その1952年の『ムッシュー・ユロのホリデイ』を下敷にしたものだ。英国映画なのに、舞台もフランスで、それも全編ロケ。物語の雰囲気も、フランス映画のような、とても柔らかな仕上がりになっている。
話は、ロードムービーだ。ビーンも、テレビシリーズから16年もたっている。あいかわらず大人げないが、すっかりおじさんになって、だいぶ毒気も抜けた。そのちょっと疲れてきた、あいかわらずさえないおじさんが、なんと教会の寄付懸賞に当たって、南フランスへの旅行に出ることになる。副賞のビデオカメラも、うれしくて仕方がない。でも、しょせん一人旅だ。自分撮りは難しい。で、人に頼む。そこから、おかしなことに。悪気はないのに、うまく行かず、挽回しようとして、さらにひどくなっていく。周囲に出てくるのも、やはり大人げない人たちばかり。でも、悪い人はだれもいない。みんなで海に行こう、なんて、とてもすてきな結末が待っている。
この映画、一度見ただけでは、そのおもしろさはわからないと思う。主人公のビーンが、すでにパリの駅で、後に旅を共にすることになるヒロインとすれちがっていたり、別の登場人物が別の場面で見切れていたり、人生の中での人と人の出会いと関わり合いの妙を、旅の姿で感じさせてくれる。列車の線路の響きを思わせる哀愁に満ちた、エンリオ・モリコーネ風の音楽は、テレビ・シリーズ以来の教会作曲家ハワード・グッドールによるもので、それだけでも、繰り返し聞くに値する。だが、残念ながら、世界のどこの国からも、そのサウンドトラックは発売されていない。(しかし、ちょっと調べれば入手することはできる。)