映画も観たが、サイケというよりも、ヤクと快楽を求めるあくなき欲望を描いた映画という印象が強い。映画には少々失望したが、サウンドだけ聴いていてルナティックな幻想にふけっていた私の10代の頃がなつかしい。
もっともサントラとしてでなく、独立したピンクフロイドの作品としては、割と好きな作品だ。わずか数週間で録音されたらしいが、それにしても全編みずみずしい感性の横溢である。興味を持った方には、「原始心母」や「おせっかい」の後半の小曲や「雲の影」もおすすめします。メッセージ色の強い大作以外にもこのような魅力的な小品も彼らにはあるのだということを、知って欲しいと思う。
個人的には69から73年ころまでの、彼らのライブが良い。アルバム「ウマグマ」で当時のライブの一部を体験できるが、彼らの本領は、本作所収の「シンバライン」や「グリーン・イズ・ザ・カラー」、「サイラス・マイナー」のライブにおける、長時間演奏にあると感じている。それはまさに、抜けきった弛緩した真にサイケデリックなサウンドである。
当時の彼らにとっては、単なる「通過点」だったのだろうけど、「狂気」以降には、明らかに見出せなくなった、ある意味ピンクフロイドの叙情性の頂点をなす音と詩の世界である。