何とも形容しがたい、野蛮で生々しい、それでいてナイーブで奇妙な魅力に満ち溢れた作品です。
厳密に言えば、1stではありません。しかし、カンの代表作であると同時に、後世への影響度から察するに、最高傑作だと思います。
カンはもともと、豊かな音楽的素養があって、しかもロック・ミュージシャンではないメンバーによって構成されて点が、重要なポイントだと思いますね。これはグルグルやタンジェリン・ドリームについてもいえることです。最初のきっかけは、「とりあえず当時流行りのロック(特にザッパやジミヘン)で遊んでみた」、というスタンスですかね。
またカンのユニークさは、当時の英米ロックの受け売りにとどまらず、どんどん他ジャンルの音楽(アフロ、レゲエ、ガムラン、サルサ等)に越境し、吸収していく、ポジティブな姿勢(あそび心)にあるとも感じます。
カンというバンドが、いかにもあの時代の産物のように、時代やカルチャーの中に埋没せずに、後のパンクやニューウェーブ世代にも強い影響を与えてきたのは、彼らの強靭な技術力に裏打ちされた、学究的な創作姿勢とあそび心にあったと思います。
本作においては、後に彼らの専売特許となる、ホルガー・シューカイをメインとした、サウンド・エンジニアリングの妙技はまだ聴かれませんが、それを補ってあまりある、正反対のものが存在しています。
全体に混沌とした内容であり、何をやりたいのか、バンドの方向性とかはまだ未定であったように思われます。しかしマルコム・ムーニーやミカエル・カローリ(ギター&ヴァイオリン)を中心とした、凶暴なエネルギーの発散には、ジャンルを問わず、表現者としての根源的な凄まじいパワーを感じざるを得ません。この制御不可能な、野趣に富んだ感性の横溢は、後のアルバムには、ほとんどなくなっていってしまう彼らの特性です。
カンというバンドは、昔のバンドですが、決して時代遅れのサウンドではありません。今でも十分聴くに値する素晴らしいサウンドです。特に初期作品は、繰り返し聞かれるべき古典的名作の位置にあると思います。