80年代SFを代表する傑作「ニューロマンサー」に始まる「スプロール三部作」とも呼ばれるシリーズ最終作。前作「カウントゼロ」からさらに7年後の世界が舞台。前作以上にプロットは複雑。4つのストーリーが交互に語られ、冒頭から多数の登場人物が現れる。
それぞれにヒロイン格の女性キャラが登場するのも特徴的。前作で儚げな少女だったアンジィはいまやネット界のアイドル女優になっている。日本の”黒幕ヤクザ”の娘久美子は、ヤクザ間の抗争を避けるためロンドンに避難させられる。ロンドンで久美子の護衛役として登場するのは「ニューロマンサー」のヒロイン(?)だった彼女。タイトルロールとも言えるモナは女優アンジィに憧れる10代の売春婦だ。
「ニューロマンサー」では色濃くあった日本趣味や電脳世界の描写はやや影を潜め(久美子の回想に上野の忍池が何度も登場するが・・)、本作は生体素子(バイオチップ)と「カウントゼロ」でも描かれた精神を取り込む「箱」のアイディアが底流に描かれる。
ギブスンの筆は相変わらず、多くの説明を差し挟まず、多様な単語の羅列が鮮やかにスピード感のある文章でつづられる。印象的なビビットなシーンが連続するが、さらりと読むとあっという間にストーリーから取り残される。ばらばらだった4つのプロットの関わりが少しずつ明らかになり、その背後から「ニューロマンサー」から連枝と続くバックストーリーにつながっていく、終盤、4つのプロットがひとつに収斂していくのだが、読み解くのはなかなかに大変なのも事実。
ギブスン自体は本作後、見るべき作品を書いていないが、いまだギブスンが本作で見せた刺激的な地平を超える作品はなかなかない・・・。