チャールズ・ロイドは現在既に70の齢を超えるサックス奏者。その時代毎に優れた感性を持つ精鋭ミュージシャンとタッグを組み
名作を生み続けて来た人だが、本作は現在彼が結成したカルテット(ジェイソン・モラン(p)・ルーベン・ロジャース(b)・エリック・ハ
ーランド(ds))にて録音されたオリジナル・トラッド・カヴァー等を交えた12曲を収録。ブックレットの写真をご覧いただければ判るが、
ロイド以外のメンバーは現在30代というロイドの2世代程下の若手ばかりだが、いずれも高い演奏技術と感性を併せ持った精鋭
揃い。自身の演奏を最高の形に出来るメンバーの選出にかけて時代の先端を見据える感覚の高さはロイドならでは。
若手の瑞々しい感性を取り入れ決して時代遅れのスタイルに陥ることなく、何よりロイド自身の齢から信じられない程の尖った美
意識に貫かれたサックス・プレイにより、全体を通し思わずうっとりする気だるさと気品に覆われた雰囲気が漂う名作となった。
最近発表された「
Ten」が素晴らしかったジェイソン・モランの参加に惹かれて本作を購入したのだが、本作中では自己名義作品
での前衛さは控えめにしつつも実に美しい旋律を繰り出し、落ち着いたロイドによるサックスの旋律と絶妙な対比を造る。
冒頭滑り出すようなロイドのソロから入る「I Fall In Love Too Easily」から既にカルテット独特の色に引き込まれ、ロジャースのう
ごめくバスの旋律上にロイドとモランがお互いのフレーズをぶつけ合い融合させ生まれる心地良さは癖になるし、ビーチ・ボーイ
ズのクラシック「Caroline,No」のモダンな解釈も素晴らしい。ロイドの自作曲「Mirror」では、軽やかなハーランドのドラム・ビートに
寄り添う様に、ロイドとモランが最高に洒落な旋律を自由に煌めかせる処が小気味良い。セロニアス・モンク作の2曲は、原曲の
形を大きく崩すことこそ無いものの、カルテットメンバーの個性をしっかり滲ませた好カヴァー。
ECMレーベルの特徴なのか判りかねるが録音状態が大変優秀で、各楽器の音色が鮮明度高く聴き手に届いてくることも高印象。
時代の先端としての感覚を匂わせながらも、多くの人を魅了するポピュラー性も兼ね備える作品。今年を代表する名作の一つだ。