本CD、目玉はA.Boito没後30年のメモリアル・コンサート。1948年の6月10日、トスカニーニが古巣のミラノ・スカラ座の舞台で『メフィストフェレス』(プロローグと第3幕)と『ネローネ』(第3幕と第4幕第2場)を演奏した貴重な記録。歌手にシエピ、ネッリ、そしてシミオナー等と、皆当時はまだ有名になる前であるが、なかなか豪華。素晴らしい声を聴かせてくれる。特にネッリはトスカニーニお気に入りのソプラノであるが、これを聴くと本当に素晴らしい。
トスカニーニのオペラ演奏はNBC交響楽団のものがよく聴かれているが、NBC交響楽団のものが全て演奏会形式であるのに対して、こちらの方は舞台で演じられながらのものであるので、やはり自由さと柔軟性が違い、生き生きとした活気があり、遙かに魅力的である。
この手のCDを手に取る人は既に承知の通り、A.Boitoとトスカニーニはかなり親しい仲で、Boitoはヴェルディの台本を書いていた人物。しかも『ネローネ』の初演はトスカニーニが行っている。だからこのCDは歴史的なイヴェントの記録である。しかし、演奏はそうした記録という価値を超えて、遙かに素晴らしい! 歌手のアンサンブルも水準が高く、特に『メフィストフェレス』の圧倒的なダイナミズムは、貧弱な録音を通しても、生で聴いていた人の感動がひしひし伝わってくるもの。正直なところ、録音の質は典型的なラジオ放送の音でかなり貧弱、トゥッティでは音が潰れて団子になってしまうような状態で、時代としても水準以下であるのが本当に残念。
本CDは、二枚組。ボーナスに、同じスカラ座のオーケストラの演奏でヴェルディ:『椿姫』の前奏曲が二曲(第一幕と第3幕)、ベートーヴェンの交響曲第1番。前者は1951年にRCAが録音したものの、トスカニーニ自身によって発売が拒否されたもの(録音状態のせいと思われる)。ブラジルで限定的に流通しただけの貴重な音源。後者は1946年6月24日のライヴの放送録音。これらは録音もかなり聴ける方で、演奏も見事。特にベートーヴェンの方は、NBC交響楽団のものとは違う本当にイタリア的なリズム感で新鮮である。