古典力学の体系を自己充足的な形で簡潔に述べた本です。少ないページの中に解析力学と衝突、微小振動、剛体の力学がまとめてあります。その記述と構成の美しさはまさに宝石と言えるでしょう。論理の飛躍もなく、式の導出の省略もしていませんが、一般の教科書のような親切な説明はなく、論理的に必要にして十分という書き方なので、今何の話をしていて、何を説明しようとしているのかが分かりにくくなっています。文を一つでも理解できないとそこで立ち往生です。しかし、一度わかってしまえば、その簡潔な説明のお陰でしっかりと理論を把握できます。決して楽な本ではありませんが、努力に値する本です。また、随所に見られるエレガントな計算法も参考になります。
はじめの方のラグランジュ関数の形を推定して行く部分は評判が高いですが、これは一種の演出でしょう。結果的にオイラー方程式に対して意味を持つ関数形としては一番単純なものが得られています。オイラー方程式自体がある程度物理的内容を含んでいると考えるべきだと思います。また最小作用の原理自体がどういう根拠によるのかという説明がありません。変分に関しては、記号δが数学的にどういう意味なのか説明がなく、積分記号と順番の交換が行われていたりします。これらの本書に欠けている説明を講師が適宜補えば、講義のテキストにも適していると思います。なお、ハミルトンの正準方程式を導く際は、Hの全微分に対しdqとdp各々の係数を比較することで求めています。この部分が唯一式の導出でもう少し丁寧に書いてあればと感じた部分です。
この英語訳は文と文のつながりが良く、滑らかで読み易い文章になっています。ひとつ難点は印刷がひどいことです。添字など小さい文字はつぶれて読めない箇所もあります。この本の美点とちょうど裏腹な関係になりますが、物理の教科書として見るとあまりに抽象的で、なおかつ数学的な説明が不十分という点で個人的な好みには合っていません。印刷の悪さと合わせて星一つ減点しました。