94年、英国でもっとも話題を呼んだアルバムは、何か?もちろん、オアシスとブラーのアルバムは外せないが、それに優るとも劣らないほど評判になったのが、ポーティスヘッドの『ダミー』だ。その証拠に、「THE FACE」誌の年間ベスト・アルバムでは、オアシスとブラーを押さえて、堂々の第1位。ちなみに第4位は、マッシヴ・アタックの『プロテクション』で、ベスト・シングル部門の第3位は、このトリッキーの「アフターマス」である。実は、この3組は、いずれもブリストルの出身で、音楽的にも共通項が多いのだが、とりわけポーティスヘッドとトリッキーは、編成(男女のデュオ)も同じで、いわば異母兄弟のような関係にある。
ポーティスヘッドやトリッキーの音楽は、"トリップ・ホップ"と呼ばれているが、基調を成しているのは、ある種の暴力性をはらんだ重いダブ・サウンドで、そこにマルティカの妙に艶かしいボーカルやトリッキー・キッドのモノローグ調のボーカルが被さり、なんとも言えない倦怠感と浮遊感を生み出していく。歪んだ時間軸と視覚的感覚を併せ持ったサウンドであり、まるで三次元と四次元の間を虚ろに漂っているようなトリップ感にあふれている。加えて、音楽全体の雰囲気はモノトーンで、どこか虚無的な響きを持っている。この点は、ブリストル一派の共通項でもあるが、ともかくこの不安とメランコリーの渦の中にいったんはまると、なかなか抜け出せない。それくらい強力な磁力を持った音楽であり、間違いなく新しい。ちなみに4には、ポーティスヘッドの「ビスケット」と同じサンプルが使用されている。