哀愁のヒップホップ。
元来ヒップホップとは哀愁の音楽である。ゲットーの黒人が謳うやるせない怒り、満たし切れない虚栄心、仲間の死etc.。激しいブレイクビーツにのせて謳われるのは、存外ピュアな悲哀であることが多い。
さて、これを白人のエミネムが謳うとどうなるのか。それはもっぱらプアホワイトとしての自分の不幸な生い立ちへの怒りと身近に潜む狂気へと向かう。
母親への愛憎を謳った”Kill You”
ストーカーの狂気を一遍の美しい詩に仕上げた”Stan”
エンタメ業界での逆風と自分の決意を悲愴なまでに歌い上げる”The Way I Am”
妻に対するDV殺人をそのまま曲にしたような”Kim”
いずれも曲はキャッチーながら、その歌誌からはやるせない哀愁がにじみ出る。
もちろん最高級のエンターテナーとして、哀愁一辺倒のアルバムではない。
軽快なフローとリズムが痛快な”The Real Silm Shady”
エロいコーラスとラップのかけあいが最高な”Drug Ballad”
等々、傑作ぞろいのアルバムである。
セールス数では後の作品に及ばないものの、いまだもってエミネムの最高傑作であると思う。最近動向を久しく聞かないエミネムの再起を願って5点。いつかこれを超えるアルバムを出してほしいものだ、とエミネムと同世代の僕は切に願う。