イギリスのエレポップ・ユニット、ソフト・セルのヴォーカリスト、マーク・アーモンドが、並行してスタートさせたソロ・プロジェクト、マンバスの1stアルバム(1982年)です。
ザ・ザのマット・ジョンソン、女性キーボード奏者アン・ホーガンとの共作で、このアルバムでしか聴けないような個性的な楽曲が並んでいます。
M1「Untitled」とM3「Angels」はマットとの共作。いずれも傑作ですが、特に「Angels」は、マットによる、リズムボックス、ギター、パーカッションが作る時空を飛び越えるような音世界を背景に、マークの情熱的なヴォーカルが縦横無尽に駆け巡る、本アルバムのクライマックスといえる8分以上の大作。ふたりの強烈な個性が交錯した一瞬に輝いた超新星のような曲です。
M2「Empty Eyes」はアンとの共作で、クールなビートにアンのオルガン、マットのギターとマークの歌が退廃的な雰囲気を出しています。これもとても良いです。
カヴァーが多いのも本作の特徴で、M4はスコット・ウォーカーの「Big Louise」,M5はルー・リードの「Caroline Says」,M7はシャンソン歌手ジャック・ブレルの「If You Go Away」,M8はシド・バレットの「Terrapin」。
中でも「Big Louise」は、小規模の弦楽アンサンブルをアレンジし、マークの叙情的な歌が感動的で、本作のもうひとつのクライマックスです。
「Caroline Says」,「If You Go Away」はアンの生ピアノのみの伴奏で、ひりひりと熱っぽく歌っています。
「Terrapin」はエレピとヴィブラフォンをバックに、ダルな雰囲気が良いです。
アルバム全体を通して、まるで氷で作った赤いバラの花束のような、冷たさと情熱が混在する美意識に貫かれていて、マンバスの2nd「Torment and Toreros」と並んで、ポップス史上に燦然と輝く異端ポップスの傑作です。