この本はGilles Fauconnierの"Mappings In Thought And Language"の和訳版である。Fauconnier氏はフランス人でありながら、実に明解な英語を話し、彼の書く英文もまた明瞭である。
その一方でこちらの和訳版は、やたらと文章が難しくて、読みにくいものになっている。(往々にして洋書の翻訳版は読みにくいものである。)また、坂原氏、田窪氏ら「認知言語学」の大御所が訳に参加しているものの、彼ら独自の訳者注はほとんどなく(1章の最初と、結論の直前に少しだけみられる程度)、そういう意味でも物足りない。ほぼ同じメンバーが翻訳に参加している前作"Mental Spaces"の訳本(新版)には、背景知識を網羅した訳者の解説がついていて、少なくともその部分だけは一読に値したのだが、今回はこのようなまとまった解説もなく、「訳者あとがき」として数ページのスペースを割いてあるにすぎない。
以上のような点からも英語が苦にならないのであれば、ぜひ原書で読むことをお勧めしたい。