グラムギタリストの英雄ミック・ロンソンの本格参加でジギー・スターダスト時代の原型が形作られているが、本作のヘヴィさは後のキャリアも含めて随一のものだ。
ところでグラムロックの定義はいろいろあると思うが、総じてそれらは明るいトーンであり、ボウイについてもジギー収録のロックンロール・スイサイドという悲劇的な曲ですらフランク・シナトラのようなポジティブでリラックスした曲調であったりする。
この盤では、収録曲のテーマの深遠さはよく語られているけれども、実生活でもマネジメントの混乱やバンドメンバーとの緊張関係など色々と問題を抱えていたせいか、サウンドのテンションの高さは一種異様なものがある。
アレンジのモチーフは、クリーム、ジミヘンといったブルース系のフリーフォームなものが思い浮かぶが、同時にそれらと違い、かなり細かいところまでガッチリコントロールされている印象もある。例外的なのが、1曲目「円軌道の幅」で、ミック・ロンソンのギターはかなり自由度が高く、ベースで参加しているトニー・ヴィスコンティもかなりアグレッシブ(こういうプレイスタイルではないはずなんだが)に弾きまくっている。
次作となるハンキー・ドリーのまるでブチ切れたような明るさと対照的な、とことんダークサイドに転落するような曲群は多分このまま行けば精神的に持たないだろうと思わせるような、ボウイ自身の内面に向かうリアルな暗さと切実な心の叫びのようなものを感じさせるのである。
よくも悪くも、ブロードウェイのミュージカルのような。。。ちょっと書割のような絵空事的シチュエーションの中で役者ボウイによって演じられるジギーとは違った、H.P.ラブクラフトの生原稿をうっかり読んでしまったような、居心地の悪いダークさとロックの本気汁迸るサウンドのせめぎあいは、ボウイの尊敬するシド・バレット状態寸前の危ういメーターが振り切れそうな、闇の名盤になったと思う。