元々ジャズが苦手なもので、いわゆるジャズ・ロックも聴かない私だが
クリスチャン・ヴァンデ率いるマグマとこのアレアだけは例外的に愛聴する。
「ジャズとロックの融合」の一言に収まり切らない過剰な何かに惹かれるのだ。
声も含めて超人そのものの演奏技術。
ジャズや民族音楽を取り入れつつもジャンルをてんから無視した豪快な音楽性。
現状に留まることを拒否し、リスナーをも煽る強烈なメッセージ。
プログレッシヴ・ロックに分類されることの多いアレアだが、
そんな枠すらはみ出して現在も音楽として進化を続けている。
リスナーによる新しい聴き方の発見という形で。
ライヴ・アルバムを挟んで4作目のスタジオ作に当たる本作品は
ゲスト・ミュージシャンが多いこともあって
アレアのアルバムでも際立って特異に響く作品だ。
曲というより語りに近い「蒸発」。ジャズ的なピアノ・ソロの後に
シンフォニック・ロック風のフレーズが飛び出して
過激なフェミニスト、ヴァレリー・ソラナスの男性抹殺宣言を歌い上げる「スカム」。
バッハのブランデンブルク協奏曲の一部がバンド演奏を一切交えず取り上げられる
「ト長調第三番 ブランデンブルクの殺戮」には戸惑うが、
タイトルから推察するにドイツのブランデンブルクで行なわれた
ナチスのガス室大量虐殺への抗議だろうか。
ラスト「カオス パート2」は、音楽という枠すらぶち壊すことで
優れた音楽を形作るという即興演奏の離れ業。
ピアノは故意か偶然か「ピンク・パンサーのテーマ」と同じフレーズを弾いている。
私が持っている古いフォーマットのCDでは、どういうわけか
「ト長調第三番 ブランデンブルクの殺戮」以降の三曲がひどく音質が悪い。
マスター・テープのせい?今回の再発売で少しでも改善されていればいいのだが。