SFのことなぞ全く知らなかったと云う哲学者オラフ・ステープルドンの書いた記念碑的作品。主人公が飛翔する純粋な精神体となって、仲間を増やしつつ宇宙の時間と空間の中を旅してゆくと云う、ロンドンやホジスン、ラヴクラフト等も用いた濃度の高いビジョン巡礼の話です。
ヘーゲルの『精神現象学』の様に、小さな世界から大きな世界へと順を追って拡大された視点を獲得出来る様になっていて、詳しくは伏せておきますが、最後の到達点のスケールの大きさは、恐らく今後もこれを凌駕する作品は書かれないであろうと思われる程のものです。とにかく常人の想像を絶していますので、読む時にはそれなりの覚悟が必要です。読み終えた時、あなたの前に広がっているのは以前と同じ宇宙でしょうか………。
書かれたのは1930年代ですが、現在のビッグバン宇宙の基本的な猫像が完成した時代のものなので、今読んでも殆ど見劣りがしません。知名度は低いですが、これを読んだことのある者達(クラーク、バクスター、ボルヘス等錚々たる顔触れ)は口を揃えて絶賛しています。当然の評価です。
本訳には訳者あとがきの他、久高将壽氏による解説が載せられています。宇宙の年代図は原書にもあったものです。