「花の都」「芸術の都」「ファッションの都」など、パリを形容する言葉は数多くあるが、そのほとんどは明るく華やかなものである。が、メグレ警視の活躍するパリは、雲が垂れ込め、雨のそぼ降る暗いパリだ。この作品でも、11月の霧の朝に女の死体が見つかったことから幕を開ける。メグレ警視と部下の刑事たちは、この寒々しいパリの街の中を歩き回り、タクシーに乗り、時には酒場で一杯飲みながら犯人を追い詰めていく。メグレ警視のシリーズ作品には、驚天動地の大トリックなどは無い。と言うより必要無い。そんなモノが無くとも、メグレ警視や刑事たち、犯人やほんのチョイ役まで、登場人物の存在感は圧倒的だ。ぜひご一読を。暗いパリの世界に浸れることうけあいです。