巨匠バーンスタインがDG=ドイツ・グラモフォンに遺したマーラー交響曲音源の集成。DGは98年に16枚組のボックスを、05年におなじ内容を三つのボックスで分売しており、そこから歌曲を割愛して11枚にまとめたのがこの箱になる。マーラー生誕150年、バーンスタイン没後20年に合わせて再々リリースとなったわけだが、最初のボックスのおよそ半分の厚み、三分の一というプライスに時代の隔たりを感じる。
バーンスタインによるマーラー演奏は、少なくとも各交響曲で二つのバージョンが公式リリースされている。CBSコロムビア(現ソニークラシカル)時代、およびDGにそれぞれ一種である。アナログ盤時代からそれぞれの演奏に親しんだ耳には、このDG盤の「刷り込み」がもっとも強く、それはDG音源が欧州のオケ主体だからかもしれない。もちろん本作にも含まれるNYPとの共演も名演ぞろいなのだが。
録音は8番と10番(アダージョのみ)が70年代の、他の楽曲はすべて80年代の収録で、バーンスタイン晩年の録音が大半を占める。どの楽曲もむせ返るように濃厚で、世紀末の退廃に満ちている。あまりに分かり易く、また時に劇画調の過剰さも感じるが、それもバーンスタインならでは。齢を重ねても枯れることが無かった巨匠の「マーラー表現の変遷」を、CBS音源との比較で辿るのも面白い。
全体を通しての演奏水準も高く、これに比肩しうるのは、おそらくショルティ/シカゴ響とテンシュテット/LPOくらいだろうか。オケを換えながらこの水準を維持したのは、バーンスタインただ独りかもしれない。
なお全10曲中、CD1枚に収まっているのは4曲(実質は3曲)のみ。他はすべて2枚にまたがっている。これは長尺演奏が多いバーンスタインならではで、他の既発ボックスでも同様。ノンストップでの鑑賞にはハードディスクを活用するしかない。
それにしても、ここに収められた音源、特に5番などは、今までに何枚買ったことか。そろそろ打ち止めにしたいと思いつつ、新しい体裁で出るとまた買って(買わされて)しまう。我ながら困ったものである。