ヴァンの新作マジック・タイム(洋盤)を一聴して感じたのは、曲調のバラエティーの豊富さでした。アイリッシュ・ハートビートやヴィードゥン・フリースが全面的にアイリッシュ回帰をテーマにしていたり、あるいはイントゥ・ザ・ミュージックに見られるヴァンの支配的なR&B解釈に基づいたコンセプト・アルバム的なアプローチではなく、“ブルース、ジャズ、ロック、ケルティック”を満遍なくちりばめ、なおかつエンライトメント以降のある種、ロックにカテゴライズしてしまうにはあまりにも透明感に満ちた楽曲・編曲で独自の音楽世界を作っています。バック・オン・ザ・トップ以降絶好調の力強い発声も手伝い、前作ワッツ・ロング・ウィズ・ディス・ピクチャーを凌ぐ佳作に仕上がっています。往年のヴァンのファンはただひたすら頷きながら「よっしゃ、ええ、ええ、これじゃ、これ」といったリアクションが多数を占めると思いますが、このアルバムからヴァンを聞き始める(いる事を切に願います)人たちは「(ヴァン・モリソンって)ロック野郎って聴いてたけど、泥臭さもないし、なんか洒落ていていい!。」というリアクションもあってもおかしくなさそうな、言い方を変えればとっつきやすい感じにも仕上がっていると思います。(歌詞はまた別ですが)パディ・モロニーの参加もあり、ケルティック色も楽しめたり、冒頭部ではポエティック・チャンピオン・コンポーズばりのヴァンの味わい深いサックスも今回聴けます。”Don’t lose the wonder in your eyes, I can see it right now when you smile, Let me go back for a while, To that magic time”と表題曲に歌われていますが、60歳の男が自分のPRIME TIMEに思いをはせているほほえましい姿が眼に浮かびます。是非、聞いてみてください!