“一回生まれ変わった感覚の自分がいる”“これからは、溢れる思いを皆に伝えてゆこうという”
NHKでの本人談である。まっさらになった彼の音楽には、もはやためらいもないし、再び闇の帳が下りることもなさそうだ。いや、正しくは自分のそれとの闘いにおいて、制御という術を身につけたからこそ、今は逆に同じように闇と闘う人々に向けて、GIVEすることにライフワークを見出したようだ。
今作は「愛をください」の世界を更に発展させ、スピリチュアルPOPSな印象を受けた。昔の作品に必ずあった求心的でキャッチな曲を求めるのではなく、透明で緩やかな旋律の流れを感じる抽象的な作風になっている。また声は病気後のせいか、何かを潜りぬけた苦行や闘いの痕のように割れてしまっている。
だが、逆にそれらが彼の歌手としての佇まい方や、ソウルをはっきりと表す象徴になってきていた。確かに声は致命傷になりかねないし、初めに今作を聴いた時は、POPSの彼を期待していた自分にもショックは少なからずあった(初めて投稿した時は☆2つにした)。しかし、逆に徳永だけだ。それら物質的なものを超越した、癒しの存在を口にしてしまうのは。長渕などは男臭く筋肉や力強さで熱く“鼓舞する”エナジーだが、徳永のそれは死と向かい合ったからこそ、しなやかに、弱者に優しく浸透する“癒し”なのだ。彼自身の体も何か老師のように細くなってしまったが、曲の魂は非常に穏やかに温かいオーラを放つようになっている。
ひょっとしたら、ファンのみ、だろう。そこまで思えるのは。だが伝わるだろう温もりは確実にある。曲たちは彼の思想的なフロウ、情熱と自然体がそのまま音にかたちを変えた、リラックスした世界。新しい血がどの曲にも流れている。病気をしたからこそなのか、こうも内側からのパワーが発せられるとはと驚く。