本書は、漫画の神様・手塚治虫がかつて『ビッグコミックス』誌上(1976年9月10日号〜1978年1月25日号)に発表した衝撃の問題作『
MW−ムウ−』を基に7月4日に公開された映画『
MW‐ムウ‐』(監督:岩本仁志、主演:玉木宏)のノベライズである。
バンコクで起きた日本人誘拐事件の背景に16年前に起こった沖之真船島での “MW−ムウ−”にまつわる一連の事件に隠されていた謎をそのとき島に残された二人の少年・結城と賀来が互いの絆を深めながら島の関係者に近づきひとつひとつ真相を暴いて行く…。
島の出身者で現在、LA新世紀銀行に勤務するコーポレートファイナンス部次長・結城美智雄と山の手教会で聖職に就く神父・賀来裕太郎、誘拐事件の捜査に二人の関与を疑う警視庁捜査一課の沢木、16年前に起きた沖之真船島での事件と疑惑に関心を抱く東京中央新聞社会部記者・牧野京子、沖之真船島での事件の鍵を握る現内閣外務大臣・望月靖男などなど…。
現時点では映画を未見であるが、『
MW−ムウ−』のイメージを損なわないよう工夫を凝らしているものの原作の愛読者としては、読後感として今ひとつ物足りなさを感じた。最も大きな要因は、原作にもあった結城という神をも欺く悪魔のような強烈なダークヒーローの存在感が(原作が素晴らしかったせいか)感じられなかった事が大きく、本作では、単なる異常な殺人鬼のような印象を受けた。それでも作り手が原作の骨格部分を大事にしている事は伝わったし、特に原作では、あの背筋を凍らせるような衝撃的なラストが印象的であっただけに本作はどのように対応しているのか気になっていたが、原作とは違うもののある程度は納得できた。
余談であるが、沢木が結城の部屋を家宅捜査する際に協力する本庁の鑑識員・麦山攻(名前からして
『相棒』のあの人を連想させる)には大笑いしました。