タミヤの新1/350大和の発売を意識して出版されたと思われる一冊ですが、模型雑誌別冊の割にモデラー向きとは言いかねる内容です。
模型作例はタミヤ1/350と1/700のものがそれぞれ一本、1/350キット用の手すりの張り方を解説する記事が一本のみで、あとはイラストによる細部考証や装備の変遷、46センチ砲塔の形状解析や実艦解説、戦闘記録などとなっています。
堀籠氏による緻密な46センチ砲塔の形状解析や佐藤氏による細部のイラスト解説は興味深いものですが、やや微細にすぎて模型に反映するには難しいものも多く、また大和全体形状を把握できる大きな図面がないため、初心者向けのビジュアル解説本としてはわかりにくくなっています。
また呉大和ミュージアムの大型模型の写真も大判で掲載されていますが、これも出来れば写真点数を増やして模型制作の役に立つような細部を紹介したり、実艦の現存写真に残されていない角度からの全体形状を把握できるようなショットが欲しかったところです。また大和ミュージアムの考証とタミヤのキットの考証には細部に相違がありますが、この点についても踏み込んだ解説があれば、と思います。
河野氏の実艦解説は要領よくまとまったものですが、実艦解説の記事中の藤本5万トン戦艦案は実際には20インチ3連装砲塔4基12門で計画されているにもかかわらず、イラストでは四連装砲塔3基で描かれています。これは艦艇研究家、遠藤昭氏の作図したものと同様であり、おそらくその影響をうけてイラスト化したものと思われますが、これに代表されるように記事中に諸説を未消化なまま取り込んだ部分が散見される点はやや気になります。ちなみに戦史記事については米軍の視点から記述されていますが、モノクロながら参加航空機の塗装図などもあるよい記事だと思います。
また渡辺氏の大和型戦艦の装備の変遷を解説した記事のコラムなども、少々首をかしげる内容です。大和型戦艦の艦載機が従来の日本戦艦より多いのは3機1セットの弾着観測任務用の機体を予備含めて搭載することを予定したからに過ぎず、考察されているような副砲を利用した特殊な射撃データの収集を前提として計画されたようには思えません。
また首尾線上の副砲を主砲前(後)に移動させればバイタルパートを短縮できるという主張ですが、副砲塔下には構造上副砲弾薬庫があり、その防御を考えればバイタルパート長はかわりません。副砲弾火薬庫防御を諦めた場合、防御上非常に脆弱な部分が発生し、かつそれはやはり主砲弾火薬庫に隣接せざるをえず、極めて危険な設計となるでしょう。
外観の情報については正確なのだと思いますが、艦の構造に踏み込んだ部分については上述にコラムのような疑わしい記述が散見され、読み手に多少の注意が必要な気がします。
一冊を通じて、全体にモデラー向けとも艦艇マニア向けとも言い難い印象です。
記事中には興味深い情報もあるので、読者の関心によっては☆の数が増えることもあると思いますが、標準的な読者はモデラーや比較的ライトな艦船ファンであろうと考え、本レビューでは☆2つの評価としています。