山本弘氏のSF小説。台風や地震と同様に、災害をもたらす存在として怪獣が現れる世界(といっても設定は現代の日本)を想定した短編集。MM(モンスター・マグニチュード)とは怪獣の災害規模を予測する指標をさす。
怪獣を予報するのは気象庁に設置された特異生物対策部であるが、この略称の気特対(きとくたい)を見た(発音した)とたんに、『おおおおっ、これはもしや...』と懐かしい気分になった。ここで既に山本ワールドに引き込まれている。40-60ページくらいの短編が4編と長めの最終話の計5編からなっており、1話ごとに完結するので、時間の合間に読める。一方で、エピソードを読み進めるうちにこの世界の法則や登場人物への造形が深まって、クライマックスである最終話に結実するため、全体として大きな1つの長編としても成立している。気特対のメンバー(対員ではなく職員)の悩みや、取材をするテレビ局側の論理をかいま見るエピソードもあり、怪獣の世界と違って人間界のリアルでシビアな側面がユーモア十分に表現されている。
第1話を読んだ時点では星3つくらいかなと思ったが、最終話で一気に話が盛り上がり、評価が急上昇した。つまり最終話のために前の4話が存在するのだ。エピソードが進むにつれて話が盛り上がっていく手法と、この(本の)世界の未来の明るさを感じさせる終幕は『アイの物語』と似た構成ともいえ、非常に好感がもてる。実は愛情豊かな物語であり、かつスケールの大きな最終話を読み終わった後には爽快感を感じた。また無駄な表現がないので誰でも一気に読めると思われる。
評価は星4つとなっているが、実質4.5くらい。『アイの物語』との差を明確にするために5とはしなかったが、映画1本分の値段以上の価値はあったと思う。蛇足だが、表紙カバーの絵にあるえぐられたビルの断面、よく見ると少し変。