この作品には、宮沢氏率いるバンドMIYAZAWA-SICKが4年間に渡り世界中(スペイン、ポルトガル、イギリス、ドイツ、ブルガリア、ポーランド、ロシア、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ホンジュラス、ニカラグア、キューバ)を巡り会場を興奮に巻き込んできた時期の楽曲達が収められており、そのどれもに魅力的な熱がたくさんつまっています。
そして実に独創的であり、好奇心を刺激するように1曲1曲どこを切っても新しい音楽性が次々と現れるのが驚きです。今までよくあったワールドミュージックという括りでわかりやすくアンビエントさを提供する音楽や、それらをロックにフュージョンすることで実験的な試みを施してきた音楽と違い、非常にオリジナリティを持った音楽として完成されているのです。ラジカルな激しさを宿す一方で深遠な包容力もあり、あらゆるエスニック音楽と高いレベルで共鳴し合えるような“魂”が確かに宿っていると驚かされます。
その意味でも確固としたオリジナリティを持つ、ここにしかない音楽が鳴っていると言いたいのです。これほどまでに民族も音楽も混じり合う中で、それらをコピーしたのではなく、新しいいのちとして意思を燃やしているPOPSは他ではなかなか出合えません。
結局、何故“魂”があると確信できたのかは、物真似でなく、様々な土地の音楽の根源性を肌で学んできた宮沢氏の実践的な説得力を背景とした、自ら考え自ら掴んだメッセージが掲げられた音楽がここに生きている手応えからです。そして、それを肌に伝えてきたのが、彼の歌声の力でしょう。
意志を宿すように歌い、多彩な音楽を一声で束ね、或いは貫いてゆく宮沢氏の歌は当に作品に魂をこめてゆく姿にも見えます。そう言えるのも、彼が今まで異文化を取り込み、自らの音楽として表現する過程で葛藤してきた略歴に基づきます。土着にのみ存在しうる根源的な魂への真摯なアプローチ、それを誠実に重ねてきた歴史を持つシンガーだから成せる業、魂を揺さぶる音楽・歌声が今作にはあるのだ、と。なんという求心力だろうと思わせるヴォーカリスト宮沢の歌力でした。
またバンドも、日本、ブラジル、キューバ、アルゼンチンの国籍から成り、元々多彩な音楽性を持っていた宮沢の可能性を大きく押し広げた音を鳴らしています。特にリズムセクションはただ激しく叩くだけでなく、内省的で分厚い一撃を打つ場面もあり、非常に思想的ですらあります。