息の永いアーティストの条件として、描く世界が幅広く柔軟な姿勢が求められると思いますが、オリジナルとしては33作目の本作程ヴァラエティ豊かで、従来のメロディ・サウンドの殻を破り新たな領域に挑んでいると感じられるアルバムは私にとって、さだ史上最高と思えます。
そんな中で、冒頭の『51』は、お馴染の曲想で、安心してすーっと入っていける、いつものさだワールドです。前夜〜空缶と白鷺〜聖域〜さよならにっぽん〜遥かなるクリスマスと歌い継がれてきた社会派さだの面目躍如たる現在の到達点です。このアルバムの発売日に奇しくも阿部総理の辞任が発表されました。偶然なのか、それとも・・・。何れにせよ、時代は移り変わるのですね。
5曲目の『窓』は、寺岡呼人氏の曲にさだが詩をつけた作品ですが、今風の曲なのにさだが歌うと古風な味わいが出るのは、やはりベテランフォークシンガーの風格でしょうか。アルバムを通して、クライマックスで盛り上げる事に拘らずに、穏やかにフィナーレを迎える曲が増えたと感じます。それから、過去の思い出を老境を踏まえてではなく、輝かしい1シーンとして捉えている曲が多く含まれています。
新譜の封を切り、昔風に言えば初めて針を落とす時の胸の高鳴り・・・それから時が過ぎて聴き返した時の、新鮮な驚き・安らぎと満足感。私にとってさだまさしは、そんな作品を永遠に出し続けてくれそうに思える稀有なアーティストです。