全巻を通じても 1回だけのゲストで 無茶苦茶笑わす話は、キートンには多くはない。
ところが、完全版10巻では、そんな面白過ぎなゲストが3人並ぶ(この3人はオリジナル15巻でも揃い踏み。但し、マダム・バーナムは、ゲストとしては唯一の2回登場をその後に成し遂げる)。
「御婦人たちの事件」のマダム・バーナム、「探偵志願」のオリバー坊やは、コメディ回ではボケに回りがちなキートンが、ツッコミをやらざるを得ないボケぶりを披露する。もちろん、そこは「MASTER KEATON」なので、それだけで終わらない優れた洞察や描写があるのだが、ラストのオチまで笑いが優る。
それと、もう1人は探偵ではないのだが、独特のハードボイルドを歩む「不死身の男」も、キートンが全く圧倒される存在感。
そんなコメディチックなエピソードの対極にあるのが、2作の前後篇「光なき世界の住人」「光をくれた人」と「神の愛でし村」「聖者のいる村」。特に、前者の、救いようのない展開・ラストは、キートンすら無力にするほど。終盤になって、ネオナチや旧東独の陰惨な闇を描く作品が増えて行って、連載当時は少しキツイ印象があったが、これが「MONSTER」を生み出す序曲だったのかと思うと、これらの作品の読み方も変わってくるだろう。