総合大学の教養課程の講義録が元になっているにもかかわらず
音楽的にかなりかなり高度な内容にまで踏み込んでおり
音楽のみならず記号論や言語学などのアナロジーも多く
独特の入り組んだ言い回しでけっして読みやすい文章ではないものの
菊地成孔さんの本にはいつも知的好奇心を刺激されます。
“(旋法と服飾の両義での)モード”と“ミスティフィカシオン”をキーワードに
生涯を通して常に変化し続けたマイルス・デイビスの音楽を分析しています。
マイルス・デイビスの活動を現地でリアルタイムで経験したわけではなく
音源や文献のみからこれだけの推論ができるのはまったく驚きに値します。
ひょっとして、
マイルスのことを語っている批評家たちは全員、
なにも知らず、なにも聴こえていないのでは?
ムードに酔っているだけで、
整数すら数えられない人々なのでは?
という菊地成孔氏の言葉に強く共感を覚えます。
布施明仁氏のリディアン・クロマティック・コンセプトによる
マイルス・デイビスの楽曲のアナライズや
日本人で唯一マイルス・デイビスのバンド・メンバーになった
キーボード奏者ケイ赤城氏のインタビューや
ファッション・デザイナー高橋是州氏による
マイルス・デイビスのファッション・スタイルの変遷の分析など
少なくとも日本においてはこれほど多角的なマイルス・デイビス論は
ほかに存在しないし、これからも出ないのでは?と思ってしまいます。