これまでの彼の独自と言ってもいい歌心あるエレクトロニカを基本的には踏襲した本作も、相変わらず素晴らしいです。ほんと、4年ぶりとは思えないほど、根っこの部分は全く変わらないです、夜空に描いたオーロラの連なりがゆらゆらと揺らめきながら次第に変化を遂げていく様な美しさは、他のエレクトロニカではちょっと味わえないです。
変わらない強さを持ったハラカミですが、よく聴くと今作がこれまでよりも、穏やかさやたおやかさが増している気がします。めくるめく目まぐるしい展開や、強力なインパクトは抑え気味になり、なんとなくのどかなイメージを持ったミニマル的手法を多く取っています。これはジャケットの古い家屋にも表れているように、どこにでもある風景を特に力むことなくスケッチしたような音像を目指した結果なのかなと思います。ですから、一聴すると地味になった印象を抱くかもしれませんが、じわじわとふわふわとしたノスタルジックな気分が自分の中に充満していくことでしょう。侘び寂びを重んじた一歩、引いて制作している感じが、じわじわと伝わってきます。
なおM5は細野晴臣のカバーで、歌唱はなんと本人によるもの。これがなかなか曲の朴訥とした印象と相性が良く、上手くはないけれど滋味深い味わいがあるドゥルッティ・コラムのヴィニ・ライリーやジョアン・ドナードなどの歌唱を想起させられた。これだったら、ミニアルバムなとで全曲歌って、一枚作ってみても、素晴らしいものにあると思う。今回は1曲だけ歌モノというのは、ちょっと寂しい気もした。