僕は重度のメタリカファンではありますが、ヴェルヴェッツも大好きです。よって、完全に俺得なアルバムです。
ですがこのレビューは、いちメタリカファンとして、購入を考えてるメタリカファンに向けて書きます。
まず、このアルバムをメタリカのアルバムと思ってはいけません。
同じく、ルー・リードのアルバムとも思ってはいけません。
ただ単に、ルー・リードとメタリカのコラボアルバムとも思ってはいけません。
形式的にはメタリカが作曲と演奏を。ルー・リードが歌詞とヴォーカルを。傍から見れば奇妙で豪華なコラボ…。みたいに映るかもしれませんが、このアルバムばっかりはちょいと事情が違います。
19世紀ドイツの劇作家、フランク・ヴェーデキントの戯曲『地霊』『パンドラの箱』が原作になった『LULU』というオペラがあり、それを現代でもう一回やろうと、ルー・リードが過去にもコラボした経験のある演出家のロバート・ウィルソンとアイディアを練っていたところ、2009年のロックの殿堂25周年記念式典のライブでひょんな事からジャムる事になったメタリカに共作を持ち掛け、ルー・リードが温めていたアイディアをメタリカに提案したところ、メタリカ側が快諾し、このアルバム製作に至る…。という経緯があります。
この経緯を知っておかないと、大変な事になります。
これを頭に入れないで聴くと、多くのメタリカファンは、「何だこれは!クソじゃないか!ちっともメタルじゃない!」と吐き捨て、アルバムを床に叩きつける事でしょう。3000円をドブに捨てたような感覚に陥るハメになります。
なので、まずこういった経緯から、このアルバムは製作されたんだと理解する、許容する事が大切です。
そして製作手順ですが、ルー・リードが話を持ちかけた時点で歌詞は大方書きあがっており、それを元にメタリカが曲のアイディアを膨らまし、ほぼ即興に近い形で、その場その場でレコーディングしていく、という手順を踏んでいます。さながらレッチリです。
この「手順」が重要であり、ポイントであり、注意点でもあります。
この「手順」が単なるコラボアルバムとは異質なものとなっているんだと思います。
メタリカは、今までほとんど「まず曲を書いて、その曲に沿って歌詞を書いていく」という手法を取っています。
しかしこのアルバムは手順が真逆。ルー・リードが書いた詞が先にあって、そこから曲を作っていく。
これが大きく作用しているのだと思います。
メタリカのメンバーが『LULU』がどういうものか理解するところから始まる訳です。そしてそれを知り、理解し、そして(失礼甚だしいが)ルー・リードという人物を理解して、どういう事ができるだろうかと、模索しながらその場でレコーディングしていく。
『...And Justice For All 』のような、ハナっからケツまで考え抜いて曲を構築してから、それに歌詞を当てて…という従来の手法とは違う、メタリカにとって今までにないアプローチでもって製作されたコンセプトアルバム。
それを考えると、今までの僕達が想像している、知っている従来の『METALLICA』とは違うものが出来あがってもおかしくない。と納得いくはずです。
なので僕達メタリカファンはまず購入前にある程度「理解」する必要があります。
ルー・リードがどういう人物で、どういうキャリアを辿って来たか。どういう作品を作ってきたか。
『LULU』とは何なのか、どういう物語なのか、どういう人なのか。
これらを知ってから、理解してから聴くと、案外すんなりと『LULU』の世界に入って行けると思います。
カーク曰く「これはルー・リードでもなく、メタリカでもない、全く違うものだ。これをメタリカのアルバムとして評価する事は出来ない。そして、ルー・リードのアルバムとしても評価する事は出来ない。」だそうです。
だから評価するとすれば『LULU』としてはどうなのか?というところだと思います。
全くメタルしていないのかと言われれば、案外そうでもないので、次のメタリカのオリジナルアルバムに、今回の経験がどう活かされるか、楽しみです。
よって、これはメタリカのアルバムではないので、『LULU』というものに興味のある人だけ買えばいいと思います。
最後に個人的感想です。
皆様方は「長い・退屈」といったイメージを持ってらっしゃるようですが、僕は逆にそこがツボでしたね。
延々と繰り返されるミニマル的な展開に、ルー・リードの捏ね繰り回すようなヴォーカル。僕こういうの大好物。
そんでジャムで曲作ってレコしたお陰なのか、グワングワンとグルーヴします。
今までのメタリカからは聴けなかった、メタリカとしてはある意味異質のグルーヴが、このアルバムにはたっぷりです。
そしてさすがルー・リード。歌詞が綺麗。戯曲をモチーフにしているだけあって、とても詩的。押韻や言葉のチョイスが綺麗です。
和訳も良い感じで、ルー・リードの世界を損なわれずに上手く訳してます。
終盤に進むにしたがって段々とドープな雰囲気になっていくのはもうたまらんかったですね。
湿っぽくて、ドロドロしてて、絡みつくような、サイケでプログレな音を出すメタリカっつーのも、ある意味貴重かと。
結果、とても俺得なアルバムでした。