遂に投下されたヒップホップ界、いや音楽シーン全体の星「アウトキャスト」の片割れ、ビッグ・ボーイ待望のソロアルバム。
最近ではジャネル・モネイのデビュー作のプロデュースでも素晴らしい仕事をしていただけにこちらの期待も最高潮になっていた。
アウトキャストでは相方に奇人アンドレ3000という超強烈なキャラクターがいる為、どうしてもビッグ・ボーイの存在が霞みがちだが、
超高速でまくしたてる歯切れ良い彼の高度なラップスキル無しでは彼らがこれだけ高い評価を受けることも無かっただろうし、02年
にはアンドレとダブルアルバム形式で「スピーカーボックス」という名作を発表し彼単独での能力の高さを十二分に証明している。
それだけに事前にある程度の作品のレベルの高さは予測できたものの、実際に接すると流石と言うべきか、常に聴き手の予想を超
えてくる発想の豊かさと、人を否応無く楽しませる天性のエンターティナーとしての才能が炸裂し、かなり強烈な出来になっている。
軽く一聴してまず印象に残ったのが、各曲フック部分の印象の強さ。今作で呼びこんだ個性的なボーカリスト陣が歌うメロディーは
一度聴けば思わず鼻歌したくなる程に分かりやすく魅力的だ。音楽の部分に関しては、所謂電子効果音を存分に導入した未来色フ
ァンクという根底は従来の作品と変わらないが、曲毎の個性が強い為単調さを決して与えない。特に面白かった曲を何曲か挙げる
と、「ババババ…」という男声が創りだす細かいビートの繰り返しと強烈なフックが病みつきな「シャッターバグ」、格調高いクラシック
オペラ大合唱を大胆に引用し、部分毎にテンポの速度を絶妙に変えながら進む「ジェネラル・パットン」、原始的なビートを叩き出すド
ラムやパーカッション群に乗せ「Shake it like a Tanbourine」と何度も煽られ体が揺れずにいられない「タンジェリン」等。
またこれまで攻撃的な部分が目立った作風にも微妙に変化が感じられ、メランコリックなキーボードの音がダウナーさを醸し出す「タ
ーンズ・ミー・オン」や、珍しくシリアスな空気が漂う「ザ・トレイン・パート2」等で曲調に合わせ意図的にテンションを落としていると思
われるボーイの語りも、彼の新たな一面を見たようで魅力的だ。
高速ラップやフック・コーラスの楽しさ等これまでの彼の魅力はそのままに、「スピーカーボックス」から8年、成熟した新しい彼の一
面も聴ける今年屈指のパーティ・ミュージックだ。