ラヒーム・デヴォーンは米R&B作家兼歌手。美しいファルセット歌唱とロマンティックなバラード作りに定
評のある人で、前作「Love Behind The Melody」からは、惜しみない女性讃歌「Woman」がシングル
カットされ、ヒットを記録した。
2年振りの新作は「愛と戦争」という仰々しいタイトルが付いており、聴くまでは若干身構えてしまったが、
全体としては、従来の彼の作風である滑らかで夢見がちなバラード中心の展開になっており、従来のフ
ァンは安心して聴けると思う。
まず作品の中心となる「Love」サイドの曲群について紹介する。
「Fragile」「Bedroom」「Garden of Love」といった性愛についての官能的なバラード群を書かせたら現
在のR&B作家で彼の右に出るものはいない。彼は記憶に残るメロディが書ける優秀な作家であり、同時
にマーヴィン・ゲイを彷彿とさせる美しいファルセットが出せる魅力的な歌い手でもある。
彼が持つ最も良い部分がこれらの曲で全開になっており、聴き手には最高のベッドタイム・ミュージックに
なるだろう。一方でテクノ色を取り入れた洒落たステッパー「The Greatness」や、ギターの哀愁ある音色
が印象に残る「Black & Blue」等の新機軸も用意されており、これまでのやや一本調子だった作品に比
べメリハリがついている。
「War」サイドの曲については作品全体の比重としては小さいが、カーティス・メイフィールドの曲を引用し
た先行シングル「Bulletproof」や、アイザック・ヘイズの曲を引用した「Revelations 2010」では、今まで
あまり見られなかった社会意識の高い内容となっており曲調もどこか土臭さを漂わせ、洗練されたドリー
ミーな雰囲気が漂う「Love」サイドの曲群と良い対比になっている。
最も目玉となる曲が「Nobody Wins a War」である。ジル・スコット等現在のR&Bシーンのスターをなんと
11人も迎え、「戦争に勝者は存在しない」と8分近くも繰り返し訴える。後半何分かはジル・スコットが延々
と戦争の無意味さについての力強い朗読を行い、この作品をより感動的なものとしている。
従来のファンも満足出来、新機軸の部分で新たなファン層を取り込める意味でも、彼のキャリアの中でも
重要な位置づけになるだろう秀作だ。
(尚こちらは通常盤であり、デラックス・エディション盤にはさらにもう一枚分新曲群を追加した二枚組とな
っている。購入予定の方はご注意を。)