大好きな日本のグループ『Lamp』のアルバムでパーカッションやシンセサイザーを演奏していた尾方伯郎(おがたたけろう)さんが素敵なアルバムを発表した。
尾方さんはジャズ、クロスオーバー、ブラジル音楽をバックグラウンドにされている方なのだが、『Lamp』の歌姫である榊原香保里さんとのユニットということで、榊原のヴォーカルをこよなく愛する私は大きな期待を持って予約注文したものである。
期待の反面、おしゃれなクロスオーバー系のサウンドに榊原のヴォーカルが添えられただけのものではないかとの心配もあったが、杞憂に終わったようだ。
結論から言おう。
これは傑作である。
10曲すべて榊原香保里のリード・ヴォーカルなのだが、曲調によって微妙に表情を変える彼女のヴォーカルに大きな成長を感じた。
榊原の歌声の微妙な揺らぎに、尾方の浮遊感のあるサウンドが絡むと化学変化が起こる。
これは、今までありそうでなかった新しい日本のポップスである。
メロディーはポップスの伝統を踏襲しながら、なんていったらいいんだろうブラジル的なコード進行や、よく作り込まれためくるめくコーラスワーク、なによりも尾方の曲そのものが良い。
ほんと、10曲それぞれが光を放つ魅力的な曲なのだ。
このアルバムはボサノバ1「レモン哀歌」で幕を開ける。シンバルにベースとアコースティック・ギターに鳥の囀りのような音が絡み、そしてフルート・ソロへと続くイントロが素晴らしく、そして榊原の歌声が聴こえてくると一気にひきこまれてしまう。
エレピとシンセサイザーに尾方と榊原のめくるめくコーラスだけで聴かせるドリーミーな小品2「春風の哀しみ」をはさみ、シティー・ポップスの王道ともいえる、キラキラとしたポップス3「果てるともなく続く宙」と続く冒頭3曲は最初のハイライトである。
4「それいゆ」は1と同様にイントロが素晴らしいが、この曲の素晴らしさはなんといっても榊原のヴォーカルである。アルバム中最高のヴォーカルが聴ける。尾方のキーボードも良い。
60年代のフランス映画を思わせるような雰囲気を持つボサノバ5「午后の翼」に続き、アルバム中最も『Lamp』を感じるポップス6「恋人たちの雨」。この3曲は2番目のハイライト。
ジャズとブラジル音楽をうまくミックスさせた刺激的な7「裸足のシルエット」、日本的情緒と異国の雰囲気を共に感じる新しい雨の名曲8「雨色日記」、個人的なベストトラックであるポップス9「恋、咲き初めり」と続く3曲が最後のハイライト。
3曲毎に極上のポップスを配置した曲順が見事である。
10「陽だまりの午後に」は尾方の前作『Mundo Novo』のレコーディング時に既に完成していた曲だが、この曲を聴いた『Lamp』のメンバー3人が「すごく良かった」「是非こういうのをもっとおがたさんに作ってほしい」と言ったらしい。
尾方さんは、『minuano』について「Lampに触発されて沸きあがった音楽」と語っているそうだ。
最後にこの曲を持ってきたところに、尾方さんのLampへの思いを感じる。
最後になるが、この10曲中1、4、6、7が榊原香保里の作詞で、残る6曲は尾方さんの奥様の芝田那未さんの手によるものだが、このアルバムの素晴らしさの大きな部分が、この詞によるものだと思っている。